チェーンストアと一番店

回想 Recollect
女性のためのヘアブティック「メゾンドジャポン」オープン(1971年)

今日は2019年3月9日です。

多店舗展開には、大きく分けて2つの考え方があります。 ひとつは完成度の高い店舗フォーマットを同じような形で次々と出店していく方法で、もうひとつは地域性や立地条件に合わせて個別に最適な出店戦略を適用する方法です。

かつての流通業界では、渥美俊一氏のチェーンストア理論と舩井幸雄氏の一番店理論という対照的な出店戦略が、どちらが正しいのかとよく議論されていました。今の流通業界の勢力図を見ると、量販店はイオン、コンビニエンスストアはセブンイレブンという形で覇者が明確になり、その他のチェーンはすっかり勢いがなくなりました。

一方各地ではそれぞれ特色ある店舗が生き残っており、決してチェーンストア一色にはなっていません。

どちらが正しいということではなく、それぞれの出店戦略には一長一短あるというこのなのでしょう。

温浴業界で多店舗展開している企業にも、同じような施設で出店しようとする企業と、ひとつひとつ違う店づくりをする企業があります。

温浴施設の場合は、温泉や地下水、借景、気候といった自然資源が商品価値の中で重要な意味を持っています。これらはその土地固有の資源ですから、同一フォーマットで扱おうとすると、その魅力を最大限に引き出すことは難しくなります。

また物流も物販や飲食業と比べるとそれほど重要ではないので、ドミナント戦略も大きな効果は得られません。

そう考えると、温浴施設のチェーンストアというのはそれほどメリットのあることではないようです。

また目まぐるしく変化し先が見えにくいこの時代に、同一フォーマットばかりというのはリスクが大きいとも思います。ひとたび逆風となれば、総倒れになりかねません。 設備投資が大きく、投資回収が長期化しがちな温浴ビジネスにおいては、時代の変化というのは大きなリスクです。

もし資金的に余力があって、次の出店を考えるのであれば、似たようなフォーマットで行くよりも、業態や規模、場合によっては業種まで柔軟に変化させ、むしろ多様化を目指した方が良いのではないかと思います。

今週はニュージャパンサウナのことを繰り返し書いてきましたが、ニュージャパン観光は典型的な多様化企業です。

なんばの本店は閉館しても、宿泊業のウエイトが高い梅田店は残っていますし、飲食業や社交業をはじめとして様々な業種を手掛けてきた歴史があります。

ニュージャパンイズムは絶えることなく、きっとまたどこかで大きく花開くことになるでしょう。

( 2019年3月9日執筆)

タイトルとURLをコピーしました