ハイイメージ付き大衆商法

ニュージャパンサウナ店頭回想 Recollect
道頓堀の繁華街にあったニュージャパンサウナ

 高価格・高粗利のトリートメントを上手に売っていた代表例がニュージャパンサウナであるということを書いていて、ふとこの「ハイイメージ付き大衆商法」という言葉を思い出しました。

この言葉は、流通業が急速に発展していった1970年代に舩井幸雄が提唱していた考え方で、簡単に言うとメインターゲットを一般大衆にすえ、お手頃価格を提供する。しかし安かろう悪かろうではなく、高級感や上質感の演出が大切だということです。

これは今でも十分に通用するマーケティングの基本原則と言っても良いでしょう。

世の中には富裕層だけを相手にするブランドショップなどもありますが、立地条件や店づくりなどはかなり難易度が高くなります。全国どこでもできるビジネスではありません。

最もボリュームの大きい一般大衆を対象に、ハイイメージを訴求する方法が、最もうまく行きやすいポジションなのです。

ニュージャパンサウナは客単価5,000円から20,000円という温浴業界の中でも突出した高客単価の施設でしたが、実は高級店ではありません。

ニュージャパンの旗艦店であり、トリートメントがセットされたコースしかないスパプラザの入館料は、安い方のロイヤルコースが昔は7,500円くらい(閉店時は8,500円)でした。

この内訳は、入館料(至れり尽くせりの豪華施設2,000円以上の価値あり)、座りアカスリ&洗体(15分程度なので、1,500円相当)、マッサージ(40分なので4,000円相当)、仕上げ整髪(10分1,000円相当)、サービスドリンク(生ビールあり500円相当)と足し算していくと、実は9,000円以上の値打ちがありました。

福袋と同じで、バラすと9,000円以上かかるものが7,500円で買えるということは、かなりの割安感。まさにハイイメージ付き大衆商法だったのです。

ターゲットは中小企業経営者など、時間とお金にゆとりのある層がメインでしたが、大阪出張のサラリーマンや、上司と部下、接待需要など様々なシーンでも利用されていました。

その後様々な事情で入館料を引き上げざるを得なくなり、一方で設備的には変更が難しい構造になっていたので、徐々に時流不適応となってしまったわけですが、全盛時のスパプラザには福袋を開けるようなワクワク感があったのだろうと思います。

時代は令和となり、一般大衆は格差や高齢化ですっかり活力を失いつつあります。こんな時代だからこそ、世の中を豊かな気分に盛り上げてくれるハイイメージ付き大衆商法に再び登場してほしいものです。

(2019年10月9日執筆)

タイトルとURLをコピーしました