座って半畳、寝て一畳。

回想 Recollect
スパグランデ浴槽

 温浴施設の客単価は、規模に比例する傾向があります。大きな施設ほど高い入館料金を設定し、付帯部門も含めた客単価が高くなっているのです。

これはよく考えると不思議なことです。

例えばでっかいレストランだからと言って、高い料金を設定するなんてことはありえません。他のサービス業を見ても料金と規模が比例しているわけではありません。

提供している商品やサービスの質によって価格が異なる、というのが普通です。

もちろん大規模な施設の中で自由に利用できる場所や設備がたくさんあるから、その分が入館料に含まれているという考え方も分かります。

しかし、あまり施設が広くても移動するだけでかえって疲れてしまうし、温浴設備の種類がいくらたくさんあっても普通の人の入浴時間は長くても1時間前後ですから、使いきれません。

所詮人間は「座って半畳、寝て一畳」なのですから、やはり「大きいことは良い事」というわけにはいかないのではないでしょうか。

一般的に温浴施設の規模と客単価が比例傾向にあるのは、「設備を売っている」という意識が強いからだと思います。この意識から抜け出さない限り、この業界は近い将来に成長の限界を迎えてしまうでしょう。

もちろん例外もないわけではありません。規模が小さくても高単価を実現している例もあります。私の知る限りでは、大阪のなんばにある株式会社ニュージャパン観光のスパグランデ(おひとり様20,000円~、2017年に閉店)が日本で一番顕著な「小規模・高単価」の事例です。

館内全体のサービスの質を高め、顧客満足に見合った料金を設定する。そういう考え方を持った温浴事業者が増えていかなければいけないし、我々温浴関連の業種は、そういう温浴事業をつくり出すサポートができるようになって行かなければならない、と感じています。

(2007年4月21日執筆)

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