接客と接遇

回想 Recollect

 温浴業界で、「接遇」という言葉を聞く機会はあまりありません。たいていは「接客」。お客様に対処する行為や技術を示す言葉です。

いつも「接遇」という言葉を使っていた会社は温浴業界で1社だけ、ご存知ニュージャパン観光株式会社です。『温浴施設は「環境」と「技術」そして「接遇」を提供している』、という風に使っていました。

接客と接遇の違いをネットで調べると、諸説あるようでちょっと混乱します。接客とは単なるサービス行為に過ぎず、おもてなしを心をこめ態度で表すのが接遇であるとか。

言語学者ではないので、正解は知らないのですが、接客とは文字通り「客」に対するもてなし、接遇とは「あらゆる人」に対するもてなしであると個人的には解釈しています。

接客とは商売のためのテクニックであり、接遇には他者に対する敬意や腰の低さ、つまり人としての態度そのものが現れていると思います。

そう思うのは、以前書いたように私のごとき若造の鞄を持って駅まで行き、姿が見えなくなるまで見送ってくれたニュージャパンのトップの姿を見ているからなのですが、そんな出来事が心に残っているので、私はいまだに熱烈なニュージャパンサウナのファンなのです。

もし、お客様の前にいる時は丁寧でうやうやしい態度なのに、バックヤードでは乱暴で横柄な経営者や支配人がいたら、スタッフは上司が見ている前では仕事をしていても、見えないところではサボりまくるようになるのではないでしょうか。

そう考えると、挨拶や接客用語のトレーニングも重要ですが、それを表面的に訓練しているだけではあまり意味がないと思います。全員が接遇を考えるようになることで、取引先や社員も含めて「この会社を応援したい」と思ってくれる人が増えます。それが会社の成長なのではないでしょうか。

スタッフが30人いたら、1世帯平均3人とすれば本人と家族入れて90人。90人が自店のファンになって月に2回来店してくれたら180人、年間にすると2,160人。口コミも考えるともっと大きな影響力があるでしょう。

取引先が30社あっても同じことです。

温浴業界で「接遇」という言葉が普通に使われるようになった時、業界が一段と成長していくのかな、と思います。

(2019年3月30日執筆)

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