「小原庄助(おはらしょうすけ)」というのは、民謡「会津磐梯山」の囃子詞(はやしことば)に登場する架空の人物で、モデルが実在したという話もあります。
私は母からこの名前を教わりましたが、「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで、それで身上(しんしょう)つぶした」と唄われていて、ぐうたらなダメ人間を揶揄して小原庄助と呼ぶような使い方もされたようです。
最近はあまりこの名前を聞かなくなったような気もしますが。
確かに、午前中から朝寝、朝酒、朝湯とくればまずその日は仕事になりませんので、おそらく定職のある人は平日に小原庄助になることは難しいことでしょう。
その昔、ニュージャパンサウナの中野佳則副社長(当時)が、「サウナとマッサージで健康にと言っておきながら、酒も飲ますしタバコも置いてるし、本当は不健康なんですわ。」と言って笑っていたのを思い出しますが、当時の男性サウナは時間の融通がきく自由業や経営者、夜のお仕事の人、サボリーマンなど、小原庄助マーケットを集めることで成り立っていたのかも知れません。
考えてみれば、今は宅飲みの増加や、人をダメにするクッションの登場など、小原庄助マーケットはなくなってしまったのではなく、外から内へと移行してしまったということなのではないかと思います。
入浴行動が銭湯から家庭の浴室に移行してしまったのと同じです。
それを再び外へ引っ張り出すためにはどうしたら良いのか。
美容、健康、癒し、エンターテイメント…いまの温浴施設には様々な利用動機がありますが、「思い切りダメになってぐうたら過ごしたい」という小原庄助マーケットもまた、その価値を磨き上げることによって、再び市場が形成される可能性があるのではないかと考えています。
朝風呂営業の増加と休憩コーナーの多様化はその兆候なのかも知れません。
(2018年3月26日執筆)