アカスリについて文章を書いていたら、昔の記憶がひとつよみがえってきました。
それは、以前大阪ニュージャパン観光(株)の会議に参加してる時に聞いた、当時の中野憲一社長(現日本サウナ&スパ協会長)の発言。
新しく入ったセラピスト(たしか「ももちゃん」という名前でしたが)のアカスリ施術を評して、「なかなか上手いけど、まだちょっとスミズミカンが足りないね」という言葉でした。
「スミズミカン」とは「隅々感」であるということを理解するのにしばらく時間がかかりました。
アカスリの技術というのは、力加減、擦るスピードと方向、リズム、部位別のメリハリなどいろいろあると思っていたのですが、擦り残しなく全身を隅々までアカスリすることを「隅々感」という独特な言葉で表現していたのだと思います。
そんな技術評価基準があること自体が驚きでしたが、そうやって会社のトップ自らがお客さまと同じ目線に立ってサービスを受け、現場にフィードバックしていることがニュージャパンサウナの社風でした。
当時、ニュージャパン観光の社内では「インスペクション」という言葉が使われていました。インスペクションというのは点検とか検査の意味がありますが、幹部社員や役員が常時率先して現場を点検し、気づいたことを現場に伝えていたのです。
コンサルタントの立場でニュージャパンサウナの社風に接して、温浴施設経営とはそういうものだと擦り込まれたのですが、その後いろいろな会社とお付き合いしてみると、経営と現場に距離のある会社も少なくないことが意外でした。
会社の形態や規模はそれぞれですから、温浴施設の経営者は必ず風呂好きで毎日のように自施設に入浴しなければならないとは申しません。しかし、施設やサービスのすべてに常時目が行き届いていて、問題があれば即時改善していくという仕組みは必要なのです。
「些事に神は宿る」と言いますが、お客さまはアカスリだけでなく、温浴施設とサービスのすべてに隅々感があれば、間違いなく喜んでくれることでしょう。
(2017年12月16日執筆)