Credo(クレド)

2002年に完成したニュージャパンブランドブック(クレドカード)
思いや哲学は変わらない

 「心に残る人がいる」──これは、今から17年くらい前にニュージャパンサウナの顧問をさせていただいた時に、先代社長や幹部のみなさんと会議を何度も重ねて作り上げた、クレド(信条)カードのトップに書かれた言葉です。

ニュージャパンサウナといえば、サウナの聖地とか、ロウリュ発祥の地などと呼ばれ、超本格的なサウナ設備が有名ですが、それは表面的な捉え方に過ぎません。

ニュージャパンの本当のスゴさは人材の育成と、その接遇力にあったのです。

その後、有馬温泉太閤の湯の入谷社長からクレドを活用されているということを聞きましたが、それくらいで、他に温浴業界でクレドの話を聞くことはありませんでした。私からオススメすることも滅多にありません。それよりも目の前の業績改善の方が優先しているというのが正直なところです。

ニュージャパンサウナのクレドでは、「心に残る人がいる」のあと、「私たちニュージャパンのスタッフは、お客様に癒しと潤いを味わっていただくことを、ひとりひとりが楽しんでいます。」と続きます。そして社長のメッセージ、社員への約束、ザ・ニュージャパンベーシック(行動指針19ヶ条)という流れです。名刺4枚分のカード裏表にビッシリと文字が綴られています。

社長と社員が一緒になって真剣に紡いだひとつひとつの言葉は、時代が変わっても色褪せることなく、読む者の心に響いてきます。

クレドさえ作れば人材が育つというほど物事は単純ではありませんが、ぼんやりとした考え方を持っているだけでは経営理念や行動指針が現場に伝わることはないでしょう。

時代が変わり、マーケット環境が変わり、戦略や技術が変化しても、思いや哲学は変わりません。

まずは思いを文章に書いて、共有できる形にすること。あらゆるマネジメントはそこからはじまるのだと思います。

時代が変わっても

 ニュージャパンサウナのクレドに綴られた言葉について、もう少し書いてみたいと思います。

まず、トップにある「心に残る人がいる」。これはブランドの約束と言われるものです。ニュージャパンブランドとは何か。お客様に何を提供し続けているのか。何を約束するのかを表しています。

そこに書かれているのは『人』。設備でも健康増進でもないのです。温浴ビジネスを明確に「接客業」と捉えるスタンスが示されています。このような考え方を持っている企業が温浴業界にどれだけあるでしょうか。

日本のサウナ業界を牽引してきたリーディングカンパニーは、一般的な温浴企業とはかなり違うことを考えていたのです。

そしてブランドの約束は『私たちニュージャパンのスタッフは、お客様に癒しと潤いを味わっていただくことを、ひとりひとりが楽しんでいます。』と続きますが、ここにも独特のメッセージが込められています。

「癒し」とは、人の心と身体の疲れを、基本レベルに戻す働きのこと。慰めであり、慈しみです。癒しを実現するために、五感に優しい環境づくりと慈しみの心を大切にします。

「潤い」とは、人の心に火を灯すこと。基本の心のレベルをさらにポジティブな心の状態(明・善・愛・信・健・美・与)にする働きのこと。それは楽しさであったり、美しさであったり、愛する心の表現であったり、それは人を惹きつける「魅力」そのものです。

…と、後ろのページに解説がついているのですが、一般的には「顧客満足」「癒し」「元気」などと表現されていることを、ここまで掘り下げて表現した会社を私はニュージャパン以外に知りません。

「ひとりひとりが楽しんで」という表現は、スタッフひとりひとりの多様な意見、個性を尊重していて、皆がワクワク仕事を楽しみながら成長していくことを大切にしている、ということです。そのような行動がお客様に喜びや健康を与えることに繋がっているのです。

短い文章ですが、使っている言葉ひとつひとつの中には深い思いが凝縮しています。

時々氷山理論の話をしますが、ニュージャパンサウナの目に見えるハードやソフトにも現れている独特なオリジナリティは、このような目に見えない信条から生み出されているということはあまり知られていないと思います。

例えばロウリュサービスひとつとっても、単に発祥の地というだけではなく、そのサービスクオリティや開催頻度も含めて簡単には真似できないものです。

今では全国各地でニュージャパン発祥のロウリュサービスが行われていますが、なかなか本家は越えられません。本家のそれは費用対効果とか経営効率といった判断基準から生まれたものではないからなのでしょう。

(2018年11月8日執筆)

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